第9章 私の知ってる直哉くん②※

真っ直ぐに自分を見ながら言った直哉に、ななの目からさらに大きな粒の涙が流れた。




『抜いてもらってる』

その言葉が何を意味するのか、もう分かるから。




「…なんで？直哉くん…。」

直哉はそう言ったななの表情を見て、目を細めた。

その言葉を言う時は、いつも眉毛を下がらせてはいたが、こんなに悲しそうな顔をさせたのは初めてだった。




「理由は色々あるで。

俺がこうして東京に来るのに、クソジジイに邪魔されへん為。」

直哉は指を折りながら話した。

その折れていく直哉の指をただ見ていた。




禪院家が用意した婚約者とも時間を取れと、交換条件で言われた。




「会うたら、意外に千春ちゃんが可愛かったし。

ななはおれへんし。

やらしてみたら、上手に咥えるし……。」




どんどん折れていく直哉の指に耐えきれなくなって、ななは直哉のその口を両手で塞いだ。