【R18】禪院直哉→私←五条悟❇︎傷だらけの婚約者❇︎
第9章 私の知ってる直哉くん②※
「なな。」
後ろから自分の名前を呼ぶ声に、振り返りはしなかった。
「君は俺のモノになるよ。」
疑う事もしないで、自信に満ちた悟の顔。
振り返らなくても、五条悟がどんな顔をしていたかなんて手に取るように分かった。
なる訳が無い。
人の気持ちを考えないで発言する悟が嫌いだった。
時間を掛けて、ななの気持ちが自分に向くのを待っていた直哉とは、全然違う。
悟を否定する為に思い出すのは、直哉と過ごした時間だ。
その時間もまた。
直哉が自身の為だけに作った狭い世界の中での時間だという事実には、目を逸らしたままだ。
あの時感じた直哉の違和感への答えはすでに出てしまっている。
確認したい。
そして思い過ごしだと言って欲しい。
だけど、会いたく無い。
もしこの想像が事実だと知ってしまったら。
きっともう取り返しがつかなくなる。
私はきっと直哉くんに縋り付く。