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【R18】こっちへおいで【黒尾鉄朗】

第1章 こっちにおいで



高校3年生の冬。
あっけなくインターハイ予選が終わって、春高は激戦区の東京予選を勝ち進み全国まで駒を進めた。
バレーが好きになったきっかけをくれた恩師を、因縁のライバルとの決戦の舞台へ。その一心で辛い練習に打ち込み、ストイックに技術を磨いてきた。
最高の試合だった。
別に、が口癖の相棒からたのしいと、恩師からありがとうと聞けて頑張ってよかったと報われた努力に1人涙したのは1ヶ月前だ。
今は春から始まる大学のために勉強中だが、ぽっかりと穴が空いたような心が集中力を欠かさせる。
バレーに捧げた人生、もちろんこれからもバレーに関わる仕事を目標にはしているがプレイヤーとしてのバレー人生は終わってしまった。
習慣になったロードワークも筋トレもなんとなく続けているが、これらが生かされることはもうないのだ。
「1日って、こんなに長かったかな」
日曜日は朝から夕方までみっちり練習をしていたし、時間が足りないとさえ思っていた。部活のない日曜日。部活のなくなってしまった日曜日。憂鬱な気分に黄昏れているとピロンと電子音がなってメッセージが届いた。
夜久衛輔と表示された液晶にタッチしてアプリを開く。
午後から練習参加するけど、黒尾も来る?
行く、と打って、文字を消す。
今日はパス。
それだけ送るとすぐに既読がついて、返事を待たずにアプリと閉じる。

繋げ

赤い横断幕に書かれた音駒の志。
バレーボールはおもしろいと教えてもらって、あの日の事が忘れられずにただひたすらボールを触っていた。
コートにボールを落とさないように必死に繋いで、繋いで
面白さが相棒に繋がった。
この面白さをもっといろんな人に繋ぎたい。

目指すは狭き門、日本バレーボール協会。

ふぅとひとつ息を吐いてメッセージアプリを再度開く。
夜久からは了解と返事がきていて、その下にある名前をタップする。

今日会える?

少しして、部活終わったら行きますねと来た文にまってる。と返事をして携帯を裏返す。
もう、昼食まで触らない。
そんな意思表示のつもりで勉強に取り掛かる。
憂鬱な気分は変わらないが、少しマシになった気がして参考書を捲った。
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