第2章 初めてのガチャ
重たい重圧から解放されてベットに横になる。ふかふかで藁の様な匂いがした。気持ちが落ち着く。ふと目を閉じるとピンポンと音がした。
驚いて上半身を起こすと目の前に、虹色の羽が生えた金色の卵が置いてあった。
シロが置いていったの?と思ったら緑色の文字が浮かんだ。
【ガチャ神様の加護によりガチャを引いてください。初回は無料です】
『は?』
意味がわからず止まっていると緑色の矢印が現れて小さな突起を示した。まるでパチンコのスロットの様な形だ。意味がわからないまま突起を握ると【回してください】と指示のとおりに手を動かした。
虹色な羽がパタパタ動いて卵が開いた。
虹色の光の中から現れたのは青い髪を高く縛っている子供。意識がないのかそのまま倒れ込んでくるので手を伸ばすとパチっと目が開いた。
サファイアの様な綺麗な瞳に釘付けになっているとフワッと目の前に着地した。少年を見下ろすと彼は跪いて頭を下げた。
「俺は沙斬。選んでもらったからには後悔させない」
『へ?あ、いや…結構です』
選んだ覚えもない。ただパチンコのスロットを回したら卵の中から出てきた少年に素直に気持ちをぶつけてしまった。
少年は呆気に取られてサファイアの瞳を大きく見開いている。それはこっちも同じ気持ちなのだが…
「俺じゃ不満なのだろうか…これでも腕に自信はある!」
『不満とかじゃなくて…いきなり言われても』
「なんでもする!主人のためなら命をかける覚悟もある!きっと役に立ってみせるから!」
子どもは跪きながら必死に私を見上げている。その姿が健気で、この世界であった老人達の態度より好感を持てた。しかし主人とはどういうことなのだろう…
『私が貴方の主人なの?』
訳がわからず自分を指差すと少年は頷いた。
「主人はガチャ神様から加護を受けている。過去になった人物に再び命を与えて召喚することができるんだ」
『過去の人物?貴方も過去の人なの?』
「俺は何千年も過去になる。覚えている奴は居ないだろう」
俯いて悲しそうにいう少年が儚い。誰も知らない世界に召喚されて戸惑っているだろう。
『召喚しちゃってごめんね』
私も彼に同じことをしたと思うと胸が痛む。あの老人と一緒にはなりたくない。たとえ不可抗力でも少年には関係ない事だ。
「そんなことない!また役目を与えられて俺は嬉しい」