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愛が禁じられた世界で[dzl]

第21章 結末


 なぜ、この世界に愛を禁じた王様が今ここにいるのか? この世界の愛を禁じる法が出来たのは百年以上も昔の話だということはネコおじも知っていた。人間が百年以上も生き延びるという話を聞いたことはないのだが……ネコおじはもう一度王様を見た時、はっとした。王様の姿がうっすらと消えかかっていたのだ。
「それ相応の罰を与えないとな」
 かつての王様が、看守長に向かって手を伸ばした。百年以上も恨み辛みを重ねてきた幽霊となった彼が、看守長にどんな罰を与えるのか計り知れない。ネコおじは一歩前出ようとして、王様の手は止まった。
「……いいや、看守長に罰を与えるのは、ワシではない。ワシにそんな資格はないのだ」
 と王様は呟くように吐き捨て、ドズルたちの方を向いた。
 ネコおじは上げた片足を下ろすのも忘れて、王様の酷く悲しげな顔を見つめ続けた。
「騙すようなことをしてすまなかった。これがワシの本当の姿だったのじゃ」
 と王様はドズルたちに向かって深々と頭を下げた。頭の冠は易々と転がり落ちたが、カツンという音もなく消え、そこで頭を下げているのは王様ではなく、妻を亡くしてただ悲しかっただけの一人の老人へと変わっていった。
「こんな愛のない世界にしてしまって申し訳なかった。それなのにオヌシたちは真っ直ぐと「愛」を見つめていたから、あの時、助けたいと思ったのじゃ……」と老人は言った。「どうか、ワシを罰して欲しい。ドズル一行たちを見て、ワシは間違っていたのだと今更気づいたのだ……」
「でも、王様は……」
 ドズルは困惑した様子だった。
「罰するって言ってもなぁ……」
 看守長に敵意がないと分かったからか、いつの間にかドズルと並んでいたぼんも困った様子。
「うーん……」
 おんりーも難しい顔をして口を閉ざし、おらふくんは口元を萌え袖で隠しながら悲しげな表情を浮かべていた。MENはいたって普通な様子で、王様と看守長を交互に眺めていた。
「じゃあ、あれでいいよね?」
 しばらく考えたのち、何を思いついたのか、ドズルがそう訊ねながらみんなを見回した。何を言いたいのか、ネコおじにも分かったし、皆もそれぞれ頷いて同意を示した。
「じゃあ、僕たちからの罰は……」
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