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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第4章 禅寺人斬り騒動編


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侑李ちゃんを養子に迎える事が決まって


あたしは雅吉とお智ちゃん夫婦と一緒に大倉さんの道場へ侑李ちゃんを迎えに行った


侑李ちゃんは、恋太郎ちゃんと一緒に竹刀を振り回して遊んでいる所で

大倉さんはソレを腕組みしながらニコニコ笑って見ていた



にの江「侑李ちゃん!」

侑李「あっ!///」



あたしが侑李ちゃんの名前を呼ぶと、侑李ちゃんは弾かれた様に振り向いてあたしを見た

その姿に、一旦引っ込んだ涙がまた溢れそうになる



にの江「侑李ちゃん……お家に、帰るよ」



あたしは、なんとか涙を堪えて侑李ちゃんの元へ駆け寄ると

その小さな体を抱き締めた



侑李「……おうち?」

にの江「ああ、そうだよ、お家さ……今日からね、あたしと雅吉の家が、あんたの家だからね…」

恋太郎「ゆうたん、にぃえねーたんちの、こになるの?」



涙ぐみながら侑李ちゃんを抱き締めるあたしを、不思議そうな顔をして見ながら恋太郎ちゃんが首を傾げた

あたしは、恋太郎ちゃんにちょっと笑って頷いてみせると

侑李ちゃんを抱いた腕を緩めて、我が子となった可愛いその子の顔を覗き込んだ



にの江「……そうだよ」

侑李「………」



侑李ちゃんは、突然の事に戸惑っているのか

ポカンとしてあたしの顔を見上げている


その侑李ちゃんに、恋太郎ちゃんが無邪気に笑いながら言った



恋太郎「ゆうたん、よかったね!にぃえねーたん、ゆうたんのおかぁたまだって!!」

侑李「………」

お智「……恋太郎、いらっしゃい?」



まだポカンとしている侑李ちゃんの横で、嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねる恋太郎ちゃんを、お智ちゃんが優しく呼ぶ

恋太郎ちゃんは、お智ちゃんに呼ばれると、元気に「はぁい」と返事をして

大好きな母親の胸に飛び込んだ



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