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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第4章 禅寺人斬り騒動編


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にの江「……今日も、家に泊まってくのかぃ?」



何時もなら

ふらふらと何処ぞに出掛けては戻って来ない事が多い雅吉が

ここ数日、毎晩家にいるのを訝しんでそう言うと


雅吉は、ちょいと惚けた顔をして

「まぁな」

なんて珍しく中途半端な返事をした



にの江「……へんな人だねぇ」

雅吉「まあ良いじゃねぇか(笑)

それよりにの江、お前ぇ、今日は侑李に朝まで添い寝してやんな」

にの江「……え?」



寝床の準備をしながら、何となくソワソワしていたら

何かを察したように雅吉があたしの肩を抱いて言った



雅吉「………そんで、思いっきり甘えてもらったらいい」

にの江「………雅吉///」

雅吉「なぁに、俺の事は心配すんなよ!

可愛い女房と一つ屋根の下に居てねんごろ出来なくたってよ

一晩くらいはぁ我慢が出来らぁ!」

にの江「……何言ってやがんだぃ、馬鹿/////」

雅吉「ほら……行ってやんな」

にの江「…………」



あたしは、雅吉に優しく背中を押されると

そのまま黙って侑李ちゃんが居る客間に向かった





にの江「侑李ちゃん、入るよ?」

侑李「はい」



客間の前で声を掛けると、中から畏まった侑李ちゃんの返事が聞こえた

あたしはその余所余所しい声に、ちょっと哀しい気持ちになりながら、客間の襖を開けた



にの江「侑李ちゃん、今夜はおばちゃん、侑李ちゃんと一緒にこの部屋で寝ても良いかい?」

侑李「え?////」

にの江「……嫌かい?」

侑李「…ううん…うれしい///」



侑李ちゃんはそう言うと、恥ずかしそうに俯いた



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