• テキストサイズ

蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第4章 禅寺人斬り騒動編


.





雅吉「………侑李は寝たのかぃ?」



侑李ちゃんが完全に寝入るのを見届けて寝室に戻ると

雅吉が寝床の上に肘をついて横向に寝転んで居た



にの江「あぁ、ぐっすりと良く眠ってるょ」



あたしは言いながら

寝転んでいる雅吉の懐にスッと収まると、雅吉が枕にしているその腕の隙間に頭を突っ込んだ



雅吉「なんだょ、にの江

甘えやがって(笑)」

にの江「……あたしの周りには、どうしてこう、母親に恵まれない人間ばっかりが集まるんだろうねぇ」

雅吉「……ん?」

にの江「………何でもないよ」



あたしは、曖昧に笑ってはぐらかすと眼を閉じた



あたし自身、母親を早くに無くしていた


そして、お智ちゃんも、…侑李ちゃんも

亡くなり方は違えど、やはり幼少の頃に母親を亡くしている



(…そう言えば、雅吉の両親はどうしてるんだろう)



自分の身の上話を好んでしない雅吉は

自分の生まれ故郷の話も、両親の話も一切したことが無かった


そんな雅吉に、あれやこれやと過去を掘り下げて訊くほど、あたしも野暮じゃなかったから

雅吉の過去について訊ねたり詮索したりすることは、一度もしなかった



.
/ 286ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp