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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第3章 養子騒動編


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そして、潮の流れのままに船を進め、行き着いた清国で


拙者は、ついに若様を見つけた…………………の、だが





潤之助「若様!!ご無事でしたかっ!!」



拙者は、一年前、海岸で異国の者を助けたと言う農民を訪ねて

その農民の畑へと向かった


そして、その畑に若様のお姿を見つけたのだが


…どうも、様子がおかしかった



なんと、事もあろうか若様が

泥にまみれて、畑仕事をなさっていたのだ



潤之助「わ、若様!一体如何されたので御座いますか!?(汗)」



慌てて駆け寄った拙者に掛けられた若様の言葉に

拙者は更に驚愕した



若様「あなたは誰あるか!私の事を知ってる人あるか?」

潤之助「……………は?(汗)」

農民「あなた、この人の知り合いあるね?

わたし、少し和国の言葉知ってるあるよ!

それで、この人わたしが助けたね!

一年前あるよ!!」





余りの若様の変貌ぶりに茫然としていた拙者に、若様をお助けして下さったと言う農民が話しかけてきた


その農民が言うには、若様は瀕死の状態で浜辺に打ち上げられていたものの、なんとか持ち直して命は取り留めたのだが

意識が回復してみると

ご自分の御名前は愚か、何処からやって来て、ご自分が何者なのかも、全て忘れてしまわれていたのだと言う





若様「わたしは、自分が誰だか解らないけれど、助けてくれた人に恩返しするのは当たり前ね!

だからわたし、この人の畑、一生懸命耕すあるよ!!」



若様は、それまでにお見かけした事が一度も無いような爽やかな笑顔で笑うと

キラキラと煌めいて滴る汗を肩に掛けていらっしゃった手拭いで拭われた



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