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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第3章 養子騒動編


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項垂れるあたしを見て黙り込む雅吉


と、グッと俯いていたあたしの頭を、雅吉の腕が優しく包んだ



雅吉「解ったぜ、にの江」

にの江「……雅吉……」

雅吉「なぁに、お前と恋太郎は、この人斬り雅之進がきっちり守ってやらぁな!」

にの江「おや、あんた人を斬ったコトは無かったんじゃなぃのかぃ?」

雅吉「おおょ、無いともさ!!」

にの江「……(笑)」



何とも雅吉らしい物言いに思わず笑みが込み上げる

そんなあたしらを見て、また大倉さんが羨ましそうに言った



大倉「…返す返すも…お二人は仲が宜しいですなぁ」

雅吉「あったりめぇだろ!!俺とにの江は相思相愛のおしどり夫婦ってやつなんだからょ!!」

大倉「はあ…」

にの江「…何を真顔でこっ恥ずかしいことを言ってやがるんだぃ///」



照れるあたしと、ポカンとしている大倉さんの顔を見比べると

雅吉はカラカラと笑い出した


雅吉「あっはっはっはっ!!

いやぁ、そんなコトより忠義の、お前ちょっくら先に行って馬屋番の息子に渡りを付けて来いや」

大倉「解りました

では、手筈が整いましたら、そやつを遣いに出します故、相葉さんたちはそれから来て下さい」

雅吉「おぅ!合点承知の助でぃ!!」

恋太郎「らってんちょーちのちのれぃ!!」

にの江「まあ、威勢の良いコト!

恋太郎ちゃんも、一端の江戸っ子だねぇ!(笑)」

恋太郎「えろっころらねぇ!」

雅吉「はっはっはっはっ!!じゃあな、忠義の!頼んだぜぃ!!」

大倉「はい!!」



大倉さんは威勢良く返事をすると、走ってお宿を出て行った



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