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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第3章 養子騒動編


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その合図を受けて、お侍たちが雅吉に斬ってかかる


雅吉はそれをひらりひらりとかわすと、肩に担いだままだった竹刀をお侍たちに向けた



雅吉「なんだい、本気でやる気かぃ?逃げるんならぁ今の内だぜぃ?

お前ら、俺の可愛い女房に刀ぁ向けやがったんだ

手加減なんざしてやんねぇからな」

「なんだと、自惚れるなっ!!」

雅吉「おっと」



雅吉の物言いを聞いていきり立ったお侍の1人が、また雅吉に斬りかかる

雅吉はその切っ先を竹刀でパンと弾くと、流れるように強烈な胴をお見舞いした



「Σうぐぅっ…」



胴を食らったお侍が、腹を押さえて前のめりに倒れる



「おのれっ!!」

雅吉「よっと。」



次から次に襲い掛かるお侍たちを、軽やかにかわしながら、雅吉がそいつらに鋭い一撃を浴びせる

そして、雅吉の一撃を食らったお侍たちが、ばったばったとその場に崩れ落ちて行く



「くそぅ、何としても御子を連れ帰らねば…」



頭のお侍は悉く雅吉の返り討ちに遭った仲間たちをみて、唸るようにそう呟くと

キッとあたしを睨み付けた



「……かくなる上は、女の命の一つや二つ……」

にの江「!!!///」

雅吉「にの江!!」



刀を手にあたしににじり寄るお侍を見て、雅吉が此方に駆け出そうとしたら

雅吉の足元に倒れていたお侍が、ガシッと雅吉の足首を掴んだ



雅吉「こらっ!離さねぇかっ!!」

「……うぐぐ……い、今の内に女を……」

「でかしたぞっ!!」



身動きが取れなくなった雅吉を見て、頭のお侍が、あたしに向かって刀を振りかざした



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