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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第3章 養子騒動編


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にの江「大名家とは縁を切った筈なのに……今更、一体お智ちゃんに何のご用があるってんだろぅねぇ」

お智「……解りませんが……兎にも角にも、急ぎ参れとのお達しでしたので……」

にの江「そうかい………

恋太郎ちゃんの事は心配要らないから、くれぐれも気を付けて行っておいでよ?」

お智「はい、ありがとう御座います、にの江姉さん」

恋太郎「あーとぅ、にーぇ、ねーたん!」

にの江「ふふふ、どう致しまして(笑)」



あたしは笑いながら、口真似で可愛くお礼を言う恋太郎ちゃんを抱き上げた



にの江「翔吾さんには言ったのかい?お屋敷へ行くことを」

お智「いえ、余計な心配を掛けたく無かったので、申しておりません」

にの江「そうかい……じゃあ、早く戻っておやり?

翔吾さんは、お智ちゃんの姿が見えないと、この世の終わりみたいに大騒ぎするんだから(笑)」

お智「はい、解りました///

では、にの江姉さん、恋太郎を宜しくお願い申し上げます」

にの江「はいよ、行ってらっしゃい」

恋太郎「ぃよぉ、てらったい!」

お智「うふふふ///」



お智ちゃんはまた大人の口真似をする我が子を見てクスクスと笑うと

その可愛い恋太郎ちゃんの頭を撫でた



お智「恋太郎、お利口で待っておいでね?」

恋太郎「まって、おーで、ね!」

お智「まあ、うふふふふ////」



お智ちゃんはオウム返しをする恋太郎ちゃんを、愛おしそうに見詰めて笑うと

もう一度あたしに宜しくお願いしますと言って

足早に、呼び出された実家の大名家へと向かって行った




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