第9章 番外編/濡れてないと…
「はぁ?何言ってるの?」
「照れるなよ。こっちまで恥ずかしくなる」
純粋に顔を赤らめることはせず、強がってみせる寧々。
本当は嬉し恥ずかしデートみたいな気分だろうに。
パパッと選んでパパッと買う…あ、お金は俺が出してやろう。
「恥ずかしいのは五条くんの頭だと思うけど?」
「カメの方かよ?」
「何を勘違いしてるのか分からないけど、良からぬことを考えてるのは分かったわ。いい?五条くん、私はね…」
寧々はつかつかと俺に歩み寄って、細めた眼差しで俺を睨み見た。
「私が欲しいのはコンタクトの装着液!ろ、ローション…は…っ、ご、五条くんの欲しいものでしょう!?」
「ん?…えっ、は…?」
俺の脳内に無限の情報が流れ込み、いつまで経っても情報が完結しない。
ここは無下限の内側か?
知覚、伝達、生きる…という行為に無限回の作業を強制され何も出来ない。
2本足で立っているかの自覚もなく、目の前の寧々の怒った顔を見つめるのが精一杯だ。
寧々は怒っても可愛いな、コンタクトって何の話だ、ローションじゃねぇのかよ、可愛い顔は怒ったところで台無しになんかならねぇ、すげー可愛い、コンタクトつけてたのかよ?、濡れ濡れにするってローション以外あんのか、寧々…