第3章 任務と楽しい思い出
「…朝?」
夢は…見てない、悪い夢も良い夢も……。
でも、
「ふわふわする…」
寝起きの体が驚くほど軽い。
羽のよう…なんておこがましいけれど、嘘みたいに軽い。
「あれは…夢じゃないのよね」
良い夢は見ていないのに、良い思い出なら頭に残っていた。
浮ついた気持ちが体にまで反映されているみたい。
「けど…」
それじゃダメ、高専で学ぶべきことは呪術師としての力をつけること。
水無月家への復讐が私の生きる理由。
完膚なきまでに叩きのめして、再起不能に陥らせる。
楽しい良い思い出にかまけている暇はない。
それなのに…
「五条…くん…」
思い出す顔はいつまでもカッコよくて。
ほんのちょっとだけ、ね。
五条くんのことも家柄を鑑みて「付き合う」という契約をしただけ。
私は五条くんを好きにならないし、五条くんだってきっとこんな私にはすぐ飽きる。
「触らないで」なんて要求を容易く呑んでいられるほど、思春期男子は我慢強くないから。
そのうちスキンシップの好きな可愛い子を見つけて、そっちに尻尾を振るのでしょう?
ただ、まぁ…
「寧々は俺に惚れること、なんて変な条件を出す男だから、普通の人ではないんでしょうね」