第7章 もやもやするこの気持ち。
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秋───
俺の母校は春に体育祭が行われるため、三年生にとって最後となる大きなイベントは10月に開催される学園祭になる。
学園祭が終われば進学する生徒達は本格的に受験に向けて勉強の毎日となるから、実質羽目を外せる最後の機会だ。
俺の方といえば、結局教頭に頼み込まれて臨時教員の期間を延長することになり、仕方なく現在に至る。
あおに釘を刺され、あれから極力黒崎先生には近づかないようにしているし、暇さえあればあおが俺の側にいるから大丈夫なんだが……
「ちょ、朔ちゃんボーッとしすぎ。どこからどんな敵が来るかわかんないんだからね?」
「敵っておまえ……ちょ、この手はなんだよ」
久しぶりにひとりで来た屋上。
でもあざとく俺を見つけたあおがやってきて隣に並び、スッと伸ばした手は俺のケツに触れた。
「…現状、一番の要注意人物はおまえだな」
そう言ってチラリとあおに目線をやれば、満足気にニヤリと笑う。
「てかおまえ、学祭の準備は?」
「あー、俺はクラスがやるイベントの賑やかし要員という名のサボり担当だからな…」
俺たちのクラスはたこ焼き屋をやることになっていて、今はポップやチラシ、宣伝用のパネルを作ったりと、みんな協力的に動いている。
「最後の学祭だろ?クラスのみんなと青春を楽しんでこい」
「ぶっ、青春てw俺は青春を楽しむより、朔ちゃんの方がいいもん」
あおの手が俺の腰を引き寄せる。
「あ、こらっ、やめっ」
近づく顔をグイっと押し返した。
「も~っ、ケチぃ」
「だから学校でそんなことするなって言ってんだろ」
ったく、誰かに見られたら……
「あ、いた、あおく~んっ」
突然聞こえた声に振り向くと、屋上の入り口に可愛らしい男子生徒が一人立っていた。