第5章 投影
この1週間、名前は特段何か変わった事をする様子は無かった。
阿笠邸のチャイムが鳴ってドアを開けて出るまではそう思っていた。
沖矢「…なぜ貴方が此処へ?」
安室「それはこっちの台詞です。なぜ貴方が此処から出てくるんですか?」
とりあえず部屋の中にいる名前に
顔を向けると素知らぬ顔で降谷君に手を振った。
名前「じゃぁ行こうか。安室さんは指定通り徒歩で来てくれたよね?」
安室「ええ。」
名前「それなら大通りに出て迎えが来てるからそれに乗ろう。」
さっさと歩き始める名前について阿笠邸を後にした。
大通りへ出る手前の路地を態々細道を
通って進む名前に降谷君が口を開く。
安室「懐かしく感じますね。貴方とのカーチェイス。」
その言葉を聞いてくすくすと笑う名前は
あの後帰って皆んなが怒ってくれたのだと
楽しそうに、嬉しそうに話した。
名前「またやりたいね」
とんどもない発言をする名前はどこまでも楽し気だった。
沖矢「主治医の少女に怒られますよ。」
名前「きっと呆れられるだけで終わるよ」
安室「僕は懲り懲りですね。名前さんはきっと僕を撒いたでしょうから。」
名前「責っ付いて離れてくれなかった癖によく言うよ。あ…でも、ここで“彼女を離せ”って言った姿は最高にカッコ良くて口角上がってしまった。」
安室「ああ、だから俯いていたんですね?貴方程の人が怖いと思ってはいないだろうと考えていましたが。あの時は。」