第7章 限界
明らかに譲ってもらえそうにない雰囲気に自分の車なのにとまたため息が漏れた。
渋々運転席と助手席を交代しシートベルトを掛けると大事な事を思い出す。
「…免許証。」
車を発進させてから彼女はパーカーのポケットから免許証を取り出した。
「全部、乗れるのか?」
種類と書かれたその欄には全ての文字が記載されているが、俺の問いに彼女はバツが悪いといった様子で答えようとしない。
「待て。さっき赤井に会ったと言っていたな?その時点で身分証を持っていなかったとしたら承認保ごっ…」
赤信号で止まった隙に両手の人差し指を自分の唇と僕の唇にそれぞれ当て、黙ってと示してきた。
「…この間FBIの施設に行った時に他の乗り物にも乗れるようになったからそこに書いてあるだけじゃない。」
「なん…っ」
何だと?そう言うつもりだったが彼女の指が僕の唇にトントンと当たる。
された事の無い行動に戸惑い顔に熱がこもった。
その顔を見て彼女は嬉しそうに微笑んでいる。
信号が変わりまた発進させると彼女は話し始めた。
「ここに来た私は“洞察力”が鋭いらしい。
リンクして聴覚や視覚に影響が有るのかは分からないけど
運転してる所を一回見れば覚えるし
殴りかかってくる人の動きや弾道を読める。」
ーー…まさにチートだ。
現役で努力を積み重ねている人間には聞かせられない発言だ…ーー
「ただ、欠点があって。」
無くては可笑しいだろう。
充分フェアとは程遠い。
「よく気絶する。」
「…。」
「パワーがない。」
「…。」
「体力は最近少しついた。」
「…。」
充分フェアだったな、と安堵した。
つまり気絶した時点で何も覚えられない見えない戦えない。
パワーが無いと言うのだから抑え込まれたら一瞬だろう。
「…だから、はい着いた。」
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