第7章 限界
これは誰に囚われる事もない発言だろう。
彼女は敵では無いが、味方にもなりきれないと言っている。
そう思えた。
「…。」
無言で彼女のメモにペンを走らせる。
『命を狙われているのか?』
この質問に対し彼女の表情は酷く驚いたものになって、暫く経ってからとても柔らかな表情に変わった。
『私が怯えているように見えるなら、それは変化させる事により、捻じ曲がってしまう未来を憂いているから。』
『命は既に持ち合わせていない。その証拠にさっき給湯室で見ただろ。最も痛みは感じるが。』
彼女の書くメモを黙って見ていたが考えれば考えるほど、意味がわからない。
理解できない。
そのメモをシュレッダーにかけて風見を呼ぶ。
出掛ける事を告げて彼女の手を引いた。
「?」
警視庁の駐車場に停めてある愛車の助手席側を開けて催促すると乗り込んでくれた。
ドアを閉め運転席に乗り込んで彼女の方を向いた。
「正直、理解出来ない。」
思っているままの言葉を彼女に向けると彼女は笑い出してしまった。
「降谷さん頭かたい。」
彼女の態度言動には前から不思議な感情を抱いていた。今笑われるのはますます理不尽な気がする。
「実感が無いから疑っているのかもしれないな。Barで会ったあの時はタイムリープした時だったから、もしかしたら降谷さんのそういう“理解出来ない”を、体験を持って“理解して貰うため”だったのかも知れないな。」
「…柔軟に受け入れる必要があるという事か。」
「かもしれない。だって、
“全ての不可能を除外して最後に残ったものが如何に奇妙なことであってもそれが真実となる”から。」
「全ての不可能を除外…」
「私も最初はパラレルワールド何て信じてなかったよ。“米花町”の標識を見て考え込みながら歩いてたら車に跳ね飛ばされて。」
「え…」
「挙句その跳ね飛ばした人が赤井さんで。」
「!」
「死んだ事になってたら知らない子を届け出るとかできないもんな。」
まるで他人事か、何処かで見た程度の話を笑いながら楽しげに話す彼女に、なぜそんな風に振る舞えるのか疑問しかなかった。
そして工藤邸で、あの夜見た水の中に自ら顔を沈め苦しげに咽せ返る姿が脳裏に蘇る。
なぜ、そんな風に
自分から危険に向かうのか
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