
第27章 バベルの塔の時間

ようやく崖を登り終えると例の通行口が見えた
「この扉の電子ロックは私の命令で開けられます」
律さんがパチンと指を鳴らす仕草をすると、ピピっと電子音がしてドアのカギが開く
「また、監視カメラも私達を映さないよう細工できます。ですが、ホテルの管理システムは多系統に分かれており、全ての設備を私ひとりで掌握するのは不可能です」
「…さすがに厳重だな。律、侵入ルートの最終確認だ」
「はい、内部マップを表示します」
携帯の画面に律さんが盗んだ内部構造が映し出される
「私達はエレベーターを使用できません。フロントが渡す各階ごとの専用ICキーが必要だからです。従って階段を登るしかないのですが…その階段もバラバラに配置されており…最上階までは長い距離を歩かなくてはなりません」
「テレビ局みたいな構造だな」
「?」
「テロリストに占拠されにくいよう複雑な設計になってるらしい」
「こりゃあ悪い宿泊客が愛用するわけだ…」
「行くぞ、時間が無い。状況に応じて指示を出すから見逃すな」
静かに戸を開けた烏丸先生に私達は付いていく。暫くすると、烏丸先生が壁に背を向けて止まった。どうやら誰かがいるらしい
目の前にはロビー。この建物はここを通らないと階段へ向かえない構造になっている。フロントと言うこともあって警備員が何人かいる。正面玄関よりはましだが私達でさばける人数ではない。どうやったら…音や煙で一瞬の隙をつくか…いや、それだと侵入されたことがより明確になってしまう…
皆で頭を悩ませていると…
「何よ、普通に通ればいいじゃない」
イリーナ先生が近くにあったワイングラスを手にそう言った
「状況判断もできねーのかよビッチ先生!!」
「あんだけの数の警備の中どうやって…」
「だから普通によ」
先生はドレスを翻しフラフラと光の中へ歩き出した。このフロアでは目立ってしまう。けど、これは返っていい目立ち方だった
「あっ」
そして警備員のひとりに軽くぶつかりよろける
「ごめんなさい、部屋のお酒で悪酔いしちゃって」
頬をピンクに染めて困ったようにウインクするイリーナ先生皆先生に確実に釘付けになっている
「あ、お、お気になさらずお客様」
「来週そこでピアノを弾かせて頂く者よ。早入りして観光してたの」
私はまだ未成年だから分からないけど、お酒に酔うってこんな感じなのか。甘い声でピアノを指さして誘う先生
