第21章 ただいまの時間
「遊夢ちゃん…」
ドアを開けると遊夢ちゃんはベッドから身体を起こしていた。ぼーっと窓辺を見つめている。
僕等の存在に気付くと、ブリキの人形のように首をゆっくりこちらに動かす
「ッ…!」
『私は…遊夢なんかじゃない』
顔は青く、頬はやせこけ、目元にはくまができている。ハイライトのないその瞳はまるで魂が抜けてしまったようだった。また再び僕の知らない遊夢ちゃんになったみたいで、息を呑む。額に汗が滲むのが分かる
「心配しなくて大丈夫です」
殺せんせーが僕の頭にポンと触手を置くと、ベッドに近づいて行った
「すみません。お部屋から拝借しました」
先生は目にも止まらぬ速さで遊夢ちゃんに何かしている
「できました!」
そう言って彼女の鏡で姿を映す。
ぱっちりした猫のようなつり目、ウェーブのかかった黒髪。これって…
「Mine!?」
彼女は目を見開き自分の頬をぺたぺたと触る
『そうだよ…本当の私はこの姿で……早稲田遊夢は偽物で…』
「遊夢さん。自分で見た方がいいでしょう」
そういうと殺せんせーは彼女のウィッグを取った。遊夢ちゃんの地毛のクリーム色の短髪がパサリと広がる
「気づいて下さい。貴方はMineさんですが、早稲田遊夢さんでもあります。二人は決して違う人物なのではありません。
貴方の死はMineさんの死を意味します」
更に顔を青くさせこわばっていた遊夢ちゃんがついに倒れた
「ちょっ、気絶しちゃったじゃん殺せんせー!!」
「こうなっては暫くは起きませんね…(汗」
「他人事みたいに言うな!!」
僕達の突っ込みにお構いなく先生は続ける
「自分で気づくことが大事なのですよ。
この後、どうするかは本人に任せます」
帰り道、僕は先生に聞いた
「殺せんせー、なんで鏡なんかで姿を見させたの?」
「先日、病室を訪れた時に、あの部屋には鏡がありました。しかし、今日はなかった。恐らく自分の姿を見ることを嫌がった彼女に割られたのでしょう」
「!!」
「そういえば…」