第18章 怒りの銃口と刃の時間
「烏間、おまえが育てたこいつらの中でイチオシの生徒をひとり選べ。
そいつが俺と闘い一度でもナイフを当てられたら…おまえの教育は俺より優れていたのだと認めよう。
その時はおまえに訓練を全部任せて出てってやる!! 男に二言は無い!!」
その言葉を聞いてみんなの顔がぱあと明るくなる。この試合に…勝てばいいんだ!
烏丸先生にナイフを当てられる人はクラスに数人いる筈だ
「ただし
使うナイフはこれじゃない」
と言って柔らかいナイフを捨て、出してきたのは…
本物の、殺傷能力があるナイフ
「殺す相手がオレなんだ。使う刃物も本物じゃなくちゃなァ」
『ヒュッ…』
すぐ傍で遊夢ちゃんが微かに悲鳴を上げたのを僕は聞き逃さなかった。
「遊夢ちゃん、できるだけ顔に出さないでね」
僕は彼女に耳打ちをした
遊夢ちゃんはナイフを握れない。あの柔らかい対先生用ナイフでもやっとなのに…それはみんなが知っている事実
遊夢ちゃんはあれだけあの人に突っかかったんだ。もし弱みを握られたら…
何をされるか分からない
「よせ!! 彼等は人間を殺す訓練も用意もしていない!! 本物も持っても体がすくんで刺せやしないぞ」
反論した烏丸先生に鷹岡先生は何とでもないように話を続ける
「安心しな、寸止めでも当たった事にしてやるよ。俺は素手だしこれ以上無いハンデだろ」
人を”殺す”なんて僕等はやったことがない。そんなハンデがあってもできるかどうか…
「さぁ烏間!! ひとり選べよ!! 嫌なら無条件で俺に服従だ!!
生徒を見捨てるか生贄として差し出すか!! どっちみち酷い教師だなおまえは!! はっははー!!」
「…!」
烏間先生は鷹岡先生から投げられたナイフを地面から抜き取り…
皆が俯いている中、烏丸先生が僕の方に歩み寄った
「渚君、やる気はあるか?」
「…!?」
「選ばなくてはならないなら恐らく君だが、返事の前に俺の考え方を聞いて欲しい。地球を救う暗殺任務を依頼した側として…俺は君達とはプロ同士だと思っている。
プロとして、君達に払うべき最低限の報酬は、当たり前の中学生活を保障する事だと思っている。
だから、このナイフは無理に受け取る必要は無い。その時は俺が鷹岡に頼んで…『報酬』を維持してもらうよう努力する」