【現在HUNTER×2イルミリク執筆中】短編集【R18】
第12章 【合同リレー】霞屋敷のふろふき大根には柚子の皮が乗っている
「霞柱様…どうなさいました?お声をかけてくだされば…」
「……………」
ゆずはの問いかけに、無一郎はまた言葉が出ない様だった。
その様子を見て、1つの可能性が頭をよぎった。
「霞柱様…私の名前はゆずはです……」
声を掛けたくても、名前を覚えていないのでは無いか…。
そんな筈は無いと思いながらも、ゆずはは試しに無一郎に伝えた。
「……それ食べていいの?」
無一郎はゆずはの言葉には応えずに、お盆の上の握り飯を指差した。
交わる事の無い無一郎との会話に、ゆずはの目が少しだけ伏せられた。
『ゆずは…私は君だからこそ……無一郎の支えになれると信じている。』
産屋敷の優しい声がゆずはの頭の中で響いた。
『だけど……お館様……。』
ああ少し……ほんの少し……。
心が折れそうだ……。
「……お部屋までお持ちいたします……」
ゆずははお盆をぎゅっと握って、目を伏せながら言った。
「ここでいい…」
無一郎はそう言って椅子に腰を掛けた。
ゆずははもう何も言わないで、無一郎の前にお盆を置いた。
無一郎が食事をする姿を、ゆずははただ黙って見ていた。
黙々と食事をする無一郎は、やはり美味しいも不味いも言わない。
全て食事を済ませると、無一郎は何も言わずに立ち上がった。
そして黙って台所から出て行く無一郎の背中を、ゆずはもただ見送った。
空になった食器を見ながら、ゆずははゆっくりと目を瞑る。