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イケメン戦国 書き散らかした妄想

第9章 恋慕2 暴かれた心【家康】


驚いて思わずゆるんだ家康の手から逃れ、名無しは廊下へ駆け出す。

呆気にとられた家康の視界から、艶やかな垂れ髪が横切って流れて行った。

「名無しーっ!!どうしたぁっ??」

悲鳴を聞き付けた秀吉の声とともに、ダダダダッっと足音が近づいてくる。

家康は呆然と名無しの背中を見つめた。

(俺にされた事を秀吉さんに言うのか‥‥?)

「名無しっ!大丈夫か!?」

勢いよく駆けてきた秀吉が、名無しの肩をがっしりと掴んだ。

「‥きゅ、急に廊下に何かが飛び出してきて、びっくりしちゃって」

「そいつは?どこに行った?!」

「よ、よく見たら‥‥猫さんだったの。逃げてった」

「ねこ?」

「秀吉さん、ごめんなさい。お騒がせして」

「まったくだ」

秀吉は垂れ目の目尻を更に下げて優しく笑い、名無しの頭をぽんぽんと軽く叩く。

「お前に何事もなくて良かったよ」

「うん、ありがとう」

名無しはくるりと振り返った。

「家康も、来てくれてありがとう。お騒がせしました」

笑顔で嘘をつき、踵を返して去っていく名無し。

家康は唇を噛み腕組みをして、自分から逃げていく背中をじっと見つめた。




翌日、夕餉を終えて部屋に戻った名無しは違和感を覚えた。

(‥‥何だか変。この感じはなに‥‥?)

頭がぼんやりする。

でもその反面、心の奥がざわめくような。

手で胸元を押さえると、ドクドクと心臓が早い鼓動を刻んでいた。

息を大きく吸い込み、ゆっくり吐き出す。

水を飲む。

少し横になってみる。

思いつく限りの事をしてみても何の対処にもならない。

むしろ違和感は強くなっていく。

まるで胸の中に鳥籠があり、その中で小鳥がバサバサと羽ばたいているよう。

自由になりたくて、狭い籠に何度もその体を打ちつけながらも羽ばたくのを止めない。

(何これ…どうしよう。落ち着かない!!いてもたってもいられない!!)

ひどく混乱してざわめく心に浮かぶのは‥‥

あの人の事ばかりだった。
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