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イケメン戦国 書き散らかした妄想

第19章 託された花2 【家康】


御殿で書簡に目を通していた家康。

蝋燭の炎の揺れがかすかに変わった。

近づく人物の気配には覚えがある。

「何?」

「佐助です。以前にお目にかかりました。突然すみません。名無しさんを助けて頂きたく参りました」

(名無しを…?)

「入って」

襖を開けた家康はただならぬ様子の名無しの姿に驚きを隠せなかった。

「早くここへ寝かせて」

佐助に指示して布団に寝かせ、すぐに手首に触れて脈をみる。

体温が低く真っ青な顔色に、首や鎖骨付近の無数の赤い痕。

眉を寄せながら早口で聞く。

「一体どうしたのこの子。誰かに犯された?」

珍しく家康に明らかな動揺が見られた。

「犯された…というか…その…」

「いいから誰に?」

「謙信様に‥‥」

「はぁ?!何それ!軍神何やってんの?」

名無しの体を注意深く視診する。

腕や脚にも散る痕に、強い独占欲と執念を感じた。

そして寝姿から立ち上る不思議な艶かしさ。

「何か‥‥この子、変わった?」

「ええ‥‥それが‥‥」

佐助は事情を説明した。

名無しが謙信の寵愛を毎晩受けていたら、強い色香を身につけてしまったこと。

けれど本人に自覚はなく城に馴染もうと努力し、家臣女中にも分け隔てなく接したこと。

周囲の異性を惹き付けてしまい、ピリピリする謙信。

そこへ庭師との一件。

「怒り心頭の謙信様は名無しさんを激しく抱いたみたいで、その後にこの状態のまま地下牢に閉じ込め、二度と出さないと言い出したんです」

「うん…それで?」

相槌を打ち、話を聞きながらも、家康はてきぱきと布団を重ねたり、手足をさすって、名無しの体を温める。

「近辺の医者は男しかいないから、と診せるのも拒否されたので、命の危険を感じ名無しさんを取り上げました。ずっと目を覚まさなくて心配で…」

「はぁ…」

聞き終えた家康は大きなため息をついた。

「あんたの主君は相当厄介だね。それからこの子も」

「はい‥‥。とにかく名無しさんを謙信様から離して安全な所へと、勝手ながら家康さんを頼ろうと思いました」

「なぜ俺を?」

「貴方には医術の知識がある。こんな状態の名無しさんを看ていただける」
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