第14章 一日奥方3 【三成】R18
やっと忍び込めた。
もっと早く来たかったのに、どうしても手が離せない案件があった。
三成の御殿の、三成の部屋。
身を隠そうと押入れを開けたらゴチャゴチャと本が詰め込まれていた。
もの凄く嫌だけど、他に適当な所は無いので仕方なく体をねじこむ。
角がグイグイ当たって痛いし最悪。
名無しと三成はどこにいるんだろう。
信じて、と言った名無しを疑うわけじゃない。
三成の奴が手を出してないか。
あいつが信用できない。
その時、廊下を通る女中たちの会話が耳に入ってきた。
「三成様、元気になられて本当に良かった」
「ええ!それに今日はカッコよかったぁ。名無し様に着物を選んでもらって、寝癖も直してもらって。もともと整ったお顔立ちなのに、身なりに無頓着すぎて、、、」
「名無し様と並ぶと良くお似合いね」
は?
何言ってんの‥‥?
三成と名無しが似合い‥‥?
「名無し様がこのまま奥方になって下さればいいのに」
「そうね、そうすれば安泰だわ」
一体何なのこれ‥‥
名無しは俺の‥‥
ハラワタが煮えくりかえりそうになる。
信長様は何て命令をしてくれたんだ。
女中たちがこんな事を言う位なら、三成自身も今頃勘違いしてるはず。
今すぐ出ていって、名無しを連れて帰ろう。
押入れを出ようとしたその時、気配を感じて身を潜めた。
足音がしてしばらくすると部屋の襖が開く。
俺は押入れの襖を細く開けて狭い隙間から覗いた。
三成…に
横抱きにされた……
名無し!!
どういうこと…
「ごめんなさい、重かったでしょう‥‥?」
「いえ、全然」
「どうもありがとう。私、蛇が苦手で…」
「ですから、夫婦なので当然ですよ」
夫婦じゃないし‥‥やはりあいつは付け上がってる。
三成は屈んで名無しをそっと下ろした。
確かに、今日の三成は髪が整い着物も似合い、いつもよりは見れる。
普段が酷すぎるんだけど。
「名無し様‥‥」
三成が両手で名無しの手を包みこむ。
人の妻に勝手に触るな…
湧き上がってくる更なる怒りに、俺はぎゅっと眉をひそめた。
「今日は本当にありがとうございました。おかげで私は立ち直れました」