第15章 どなたでしょうか
とは言ったものの、結局のところローは未だ迷っていた。
今後どういう風にコノハと接していくか。
確かに昨日は目を覚ましたばかりのコノハがパニックにならないよう、自分が恋人であることは伏せた。
しかしその嘘は…一体いつまで吐き続ければいい?
その間コノハが他のヤツを好きになったら…?
そもそもコノハがまた自分を好きになる保証なんてどこにある?
一抹の不安が心をよぎる。
そしてその不安はローの判断を鈍らせていく。
コノハのことを思ってこのまま何も言わずのままが良いのか、私情を挟んででも自分との関係を打ち明けるべきなのか。
コノハの事を想うなら、答えは間違いなく前者だろう。
しかし今のローには生憎そんな余裕は無い。
「クソ……」
必ずしもコノハがまた自分を好きになるとは限らない。
だったら全てを打ち明け、他の男の所に行かないようあらかじめ釘を刺しておいた方がいいのでは…
そんなことを考えてしまうほどローは焦りを感じていた。
しかし自分との関係を打ち明けたとして、万が一それがあの件を思い出すトリガーになったら…?
俺を思い出し、仲間を思い出し、あの惨劇を思い出す…
そしたら確実にコノハは傷付く。
それだけは絶対に避けたいことだ。
己の中で激しくぶつかり合う、焦りと僅かに残された冷静さ。
ローは深い息を吐いた後、少しでも邪念を取り除こうと瞼を閉じた。
目を閉じても浮かんでくるのは愛しい人の笑顔。
無邪気に笑ったり、目尻を下げて優しく微笑んだり、時には涙を流しながら笑ったり…
ローの中のコノハはいつだって笑っている。
例えイライラしていても、あの顔を見ればそんな感情はどこかへ飛んでいくし、太陽のような笑顔に安心感さえ感じるのだ。
改めて気付かされた。
こんなにも自分はコノハの笑った顔が好きなんだと。