第2章 第七師団
・・・暖かい。
全身を優しく包みこまれているような、そんな心地よい感覚。
私、雪山で遭難して意識を失ったんだよね?
ということは、ここはあれか?所謂天国ってやつ?
まるでベッドで眠っているかのような安心感。
さっきまでの刺すような冷たさとは打って変わった居心地のよさに、ここが天国であると確信に近いものを感じていた。
そうか、やっぱり私はあのまま死んじゃったのか・・・。
悲しいけど、起こってしまったことは仕方ない。
結局なぜ突然瞬間移動したのか、そもそも本当に瞬間移動だったのか、何も分からないままだけれど。
願わくば、私と同じような不思議現象に巻き込まれて命を落とす人が他に現れませんように。
「まだ目を覚さないのか」
ふいに聞こえた声。よく通る男の人の声だ。
天使・・・にしては渋いおじ様の声だな。
ということは、もしかしてあれが神様の声・・・⁉︎
うわー感激!
「はい、まだ2人とも」
別の男の声が答えた。
こっちもなかなか渋い声だな。でもさっきの神様よりはもう少し若い感じがする。見習い神様かな?
「そうか。色々と聞きたいことがあるのだが仕方がない。また明日にしよう」
パタリ。扉が閉まる音が聞こえ、辺りは静けさに包まれた。
ゆっくり目を開けてみる。
当然ながら初めての体験なので、死ぬという状態がどういうものか全く分からない。
【身体】というものが存在しているのか、それとも魂と呼ばれるようなものになってしまっているのかわからなかったが、どうやら目はついているらしい。
少しずつ瞼を開けて周りを見渡すと、そこは薄暗い空間だった。
「思っていた天国と違う・・・」
もっとキラキラでピカピカで、可愛い天使がいっぱい飛び回っているような華やかな世界を想像していたのに。
ここは天国というより、なんと言ったらいいか。
「病院・・・?」
そう、薄暗い部屋には病院の大部屋のようにベッドがずらっと並べられていた。
ベッドで寝ているような感覚だと思ったら、本当にベッドで寝ていたのか・・・。
天国って案外質素なんだな。
・・・いや、もしかしてここって天国じゃないのでは?
ということは、まさか私ってばまだ生きてる・・・⁉︎