第2章 ふたりのソルジャー
「はっ! てやっ! えいっ・・・!」
一発ぐらい決めてやろうと、ミキは必死でロッドを振り続けるが、彼はその全てを剣で軽く受け流していた。
私はもう汗だくなのに、彼は涼しい顔で息も全く乱れていない。
そのくせ、一撃も反撃してこないのが憎たらしかった。
「あなたも攻撃しなさいよ!」
たまらずに叫んだ。
だが、相手は口元を緩めながら肩を竦める。
「俺が攻撃したら、お前はあっさりやられちまう。そうなったら鍛練にならないだろ?」
「相手の攻撃を避ける練習も必要なんじゃないの!?」
「教える順番ってのがあるんだよ。お前、自分から俺に鍛練してくれって言いに来たんだから黙って俺の言うこと聞いとけって」
「・・・」
私は口を噤んだ。そう言われてしまったら反論できない。
鍛練中に突然現れた彼がソルジャーだと聞いて、戦い方を教えてくれと頼んだのだ。
あれから数日、彼と組み手をしているが、私はまだ一度も彼を攻撃できていない。
・・・悔しかった。
エアリスがタークスに追われているから、私がエアリスを守らなきゃと思って、小さい頃から必死に訓練してきた。
確かに私はまだ13歳だし、4歳も年上で、そのうえ現役のソルジャーの彼に敵うとは思わない。
だけど・・・これだけ手応えがないと、今までやってきたことが全部否定されてるみたいで――――。
「ミキー!」
エアリスの声が聞こえてきた。
彼女は大きなバスケットを持って、こちらに駆けてくる。
「鍛練、終わった? お昼ご飯、持ってきたんだけど・・・」
「おっ! 昼飯か! ミキ、今日の鍛練は終わりだ」
「ちょっと・・・!」
「根を詰めすぎてもいい結果は出ないぞ? 後は自主練な」
思わず溜め息が出た。
まぁ・・・いっか。
「ほら、ミキも一緒に食べよ」
エアリスは、バスケットの中からサンドウィッチを取り出しながら微笑む。
その隣に彼が腰掛け、嬉しそうにそれを見つめている――――。
何故か、胸が苦しくなった。
「・・・私はいいや」
思わず、そう言ってしまった。
「ミキ・・・? 食べないの?」
「うん。私は後で食べる」
それだけ言い残し、私はその場を離れた。