第6章 瞳色のガラス玉
槇寿郎の憂いを吹き飛ばすように、連日煉獄家には元炎柱に稽古をつけてもらおうと多くの隊士が詰めかけた。
「お前達は素振り千回!そっちの者達はまとめて俺にかかってこい!」
木刀を手にした隊士達を次々に素手で投げ飛ばしていく槇寿郎に、隊士達は息も絶え絶えに床に転がっていった。
「はぁ……はぁ………さすが元…炎柱…」
「キツイ……吐きそう……うっぷ…」
滝のように流れる汗と、投げ飛ばされた衝撃でできた擦り傷で隊士達はボロボロだった。
「みなさん、大丈夫ですか!!」
そこへ、大量の手拭いを篭に入れた百合が駆け寄ると隊士達はざわめき出す。
「百合さん!!」
「………百合さん!」
みんなの声に応えるように、百合は一人一人汗を拭いてやり、首に手拭いをかけていく。
「冷たいお茶を用意したので、欲しい方はおっしゃって下さいね!」
「百合さん、下さい!」
「俺にも!」
「俺にも下さい!」
苦しい稽古場に現れた百合を、女神のようだと隊士達は思っていた。
「そこ!!休んだら戻ってこい!」
鼻を伸ばし百合に甘えている隊士達に槇寿郎の渇が 飛ぶ。
「ひぇ!!」
これで行かなかったら稽古はさらに激しくなると知っていた隊士達はお茶を一気に飲み干すと、次々に稽古へと戻っていった。
今の内にと百合は台所へ行き、せっせと大量のおむすびをこさえた。
「ただいま戻りました!」
百合は玄関での声に、手拭いで手を拭きながら走った。
「杏寿郎さん、おかえりなさいませ。」
「ただいま。今日もやっているな?」
稽古場から聞こえる槇寿郎の声と、隊士達の悲鳴に杏寿郎は目を輝かせる。
「杏寿郎さん、お風呂になさいますか?」
「うむ。鬼の返り血を浴びてしまったやもしれないし、そうさせてもらおう!」
「では、支度を…」
「百合さん、着替えは道着を頼む。」
「お休みにならずに、稽古に向かわれるのですか?」
「あぁ、明日は非番になったからな。」
「そうだったんですね!でも、休まれるのも大事ですよ?」
「うむ、少し手合わせしたら休むとしよう。」
「はい。では支度をしてきます。」