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オニオンスープ

第4章 3杯目


 よくない、良くない。
 よくないって!

 これヒロイン枠だから!

 エペルとか、リドル先輩とか、リリア先輩とか、カリム先輩とか、デュースの枠だから!

 エペルとデュース、それからリドル先輩本人に言ったら、物凄くどつかれそうだけど。

 リリア先輩はのってくれそう、自分可愛いのわかってるし。
 カリム先輩は、コテンって首を傾げそう。
 えっ、可愛い………じゃなくて!

 と、自問自答している間に、あっというまについたのは、見慣れたオンボロ寮前。

 ゆっくりと、やっと地に足がつく。

 そのとき、ズキッと右足首に痛みが走る。

 「やはりな」
 「やはり?」
 「監督生、足を挫いたんじゃないか?」

 言われてみれば、そうかもしれない。

 「…」
 「大事にしてくれ。監督生が怪我をしたとなれば、マレウス様も悲しむ」

 憂を帯びた目に、うなづくしかできない。
 
 「はい、…って、それわかっててここまで運んでくれたんですか?」

 シルバー先輩は否定も肯定もせず、ゆっくりと頭を撫でる。

 「手当ては、自分でできるか?」
 「あ、はい」

 これ以上、先輩の手を煩わせるにはいかない。

 「そうか。…ならば俺も、もう帰る。
 監督生も、迷子になって疲れたはずだ。ゆっくり休むんだぞ」

 優しく微笑む先輩に、今日はありがとうございました。

 と、伝えて。

 それを聞いた先輩は、来た道をゆっくりと帰って言った。

 夕陽が先輩の髪に反射して、綺麗だった。



 ……………
 ………
 ……。




 「って!」

 これは断じて、浮気じゃないから!
 シルバー先輩は、アイドル系騎士枠だから!

 どんな枠だよ!!

 などと、

 足の痛さになのか、今の心情になのか、はたまたどちらでもないのか、悶えているとガチャっとオンボロ寮のドアが開いた。

 「子分、そこで何してるんだゾ?」

 聞き慣れた声に、段々と高揚していた気持ちが落ち着いていく。

 「グリム…何してたの、今まで」
 「ふなぁ?いつも通り、昼寝してたんだゾ。監督生は、こんな時間までどこに行ってたんだ?」

 なんだ、見つけかねてただけか…。
 玄関のドアを閉め、グリムを抱き上げる。

 「グリム」

 足の痛みさえどうでもよくて、少しだけ力を加える。
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