第10章 素直への第一歩
ある日の午後、音羽はとある屋敷の門前に立っていた。
ここに立って、かれこれ一時間ほど経つ。
音羽はその一時間の間ずっと、入ろうとしては止め、門前をウロチョロと行ったり来たりしては門を見て、ため息をつく。それの繰り返しをしていた。
なぜなら、ここは錆兎が住んでる、水柱のお屋敷。
錆兎のあの手紙を受け取ってから、数週間が経っていた。音羽はあの手紙に対しての返信に、会う段取りを取りつける手紙を送っていた。
それが今日に決まり、その為音羽は、早朝、昨夜の任務を終えたその脚で錆兎の屋敷まで赴いた。
そしてそこから、冒頭の出来事へと繋がる訳だが……、
正直、ずっと避けてた手前、今更どんな顔をして会えばいいかわからない。
勇気が出ずに玄関の扉を叩くどころか、門を潜ることさえ、出来ずにいたというわけだ。
そんな音羽に、近くの木に停まって成り行きを見てた花子がとうとう切れた。
「カー!」
突然飛んだかと思えば、音羽の頭を蹴り上げる。
「キャッ、痛いっ!」
音羽か小さく悲鳴を上げると、花子は門から続く塀の上に停まり、音羽を見下ろした。
「アンタ、何時間ココ二イルツモリ!?モウイイ加減二シナサイヨ!女ナラ、根性見セナサイッ!!」
「うぅ…、ごめんなさい……。」
鴉に怒られて、頭をしょんぼりと下げる。
飼い主に似たのか、いや、それ以上に気が荒く、そして強い。
その飼い主は現在、心が弱っているのか、持ち前の気丈さ、冷静ささえも失っていると言うのに…、
(と言うか私…飼い主なのに……、しかも歳上なのに……、)
そんなことを思いながら、恐る恐る門を潜った。