【夢小説】バレー馬鹿は恋愛下手にも程がある【HQ/影山飛雄】
第8章 六話 開放されたのだが
「づがれ゛だぁ゛」
帰宅した朔夜は本当に疲れた様子で、ベッドに倒れ込んだ。
バレー馬鹿は恋愛下手にも程がある
六話 解放されたのだが
「お風呂沸かさなきゃ……でも動きたくな…………」
ぽつり、ぽつりと呟いていると肩からズレ落ちたカバンからころり、とボールが転がり出てきてベッドから落ちていった。
ぽんぽんと跳ねてから転がっていく様子を少し見つめてから、朔夜は起き上がって手を伸ばした。
芸能人の様な一瞬読めないサインが書かれている部分を触れてみる。そしてカバンの中にもう一つ入っているボールに視線を落とす。
スポーツマンのサインボール。それが手元にある、と言う事は今日合った事は夢ではなく現実なのだと告げていた。
「………………」
全部夢だった様な気もするし、宝くじでも当たったみたいな感覚で、二度と経験する事は無いだろう。
なんとか連絡先の交換だけは防げたのだから、もう出会う事は朔夜自身が試合会場に行かない限りない。
別に望んでなんかいないが、シンデレラの魔法が解けた後の様な夢心地である。
「…………疲れた」
ポツリとまた同じ単語を呟き、ボールを抱き抱えたまま、ぽふんと倒れ込む。
小さいボールは丁度いい抱き抱えられるサイズであった。
でも、バレーボールはハッキリ言って興味がないし、このまま飾る訳でもなくタンスの肥やしになるのが目に見える。
影山のは勿論、牛島のも欲しかった訳じゃないのだし、飾ってもなぁと言う気持ちが九割。でもたった一割に飾ってやらないとボールが可哀想な気もしていた。
「……ボールには罪はない」
はぁ、と溜息を漏らしてからトントンとスマホの画面を叩いて通販サイトを開く。
気は乗らないけれど、調べないと知らないのだから、と自分を納得させて画面を滑らせ、力なくスマホから手を離して朔夜は呟いた。
「……サインボールケースたっか」
◆
「洗濯だよなぁ……」
脱衣場で何度もくんくんと服の臭いを嗅ぎながら、朔夜は眉間に皺を寄せていた。
よくよく考えると少食一家で育ってきた朔夜だったので、焼肉屋なんて初めて行ったレベルだった。
いや、幼少時に何度かは行ってはいるが、それでもある程度成長してからは行った記憶がなかった。