第6章 デートの練習
それから五条先生は私の髪に糸屑でもついてたのか、何かが気になったみたいで、首を傾けて私の耳元にもう一度近づいた。
「ちょっといい?」
「うん……」
再び顔を寄せられる。
垂れた横髪を耳にかけられて、うなじを露にするように耳元の髪を掻き上げられた。
男っぽい指先に首筋を撫でられてゾクッと背中が震えてしまう。
「っ、なに? どうしたの」
「あぁ、ごめんね。ここのホクロって前からあるの?」
「ホクロ?」
右耳の裏側あたりを人差し指でトンと当てられた。そんな場所は鏡で正面から見ても見えないし、髪をアップして合わせ鏡でもしない限りよく見えない場所だ。
「三角形みたいなホクロあるじゃん?」
「ごめんわからない」
ホクロが三つあるってことだろうけど、自分ではあまり気にした事がない。
「それがどうかした?」
「……いや別に」
しばらくして五条先生は「んなわけないか」って言ってこの話は終わった。
右耳のうなじは彼に触れられた指先の感触がしつこく残っていて、眠りにつくまで熱っぽいままだったけど。
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そして、朝はやって来た。