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燦姫婢女回顧【R18】

第10章 追跡


「俺も行く!」


黙って話を聞いていたナンが立ち上がった。

「……ありがとう、ナン。でも私一人で大丈夫。」

「小娘一人で何が出来るんだい?!
ナン、ついて行きな!

でも本当は危ない目に遭わせたくないんだけど、ネズは言ったら聞かないからねえ。」

(姫様はよく分かってる………)



「命がかかっていることだ。慎重にやろう。」

優れた軍師でもある五王様を中心に策が錬られた。


ネコさんによると麗姫様は夜出掛ける予定の日は分かり易く昼寝をするという。

昼寝を始めた日に知らせをもらって、全身黒ずくめの格好をした私とナンは馬舎に隠れて待った。

ナンとこんなにピッタリとカラダをくっつけるのは初めてだから不謹慎にもドキドキした。


「来たぞ……」
ナンが小声で囁く。

夜もだいぶ更けた頃、三王様が現れた。
すぐに布包みを抱えた麗姫様もやって来た。
だいぶお腹が目立つ様になっていた。

馬に跨がる三王様の後ろに麗姫様も乗った。

「腹が邪魔だ。」

「仕方ないでしょう!……ちょっと待って。」

麗姫様はお腹に手をやると膨らみをグッと背中に回した。

(………!?)

私たちは思わず声を出しそうになった。
顔を見合わせて互いに制した。

(あのお腹は偽物だったの!?)


三王様が馬の腹を蹴り、城を飛び出して行った。

「追うぞ。」

「はいっ!」

私たちもあらかじめ用意していた馬に跨って三王様の馬を追った。

気がつかれない様に絶妙な距離をとりながら。


「ネズが馬に乗れるなんてな。」

ナンが馬を寄せ私に云う。

「うん、村で隣のおじいちゃんの放牧を時々手伝ってたから。」

「………俺の鼠姫は何でも出来るんだ、」

「えっ?何?」

「何でもねえ!見失わないように行くぞ!」




しばらく走ったところでゴツゴツした岩地にたどり着いた。

三王様の馬は大きな岩山の前で馬を停めた。

私たちは少し離れた岩陰に身を隠して様子を覗った。


大きな岩山の一角に、人夫が二人立っていた。
馬を降りた三王様が一言二言話すと、人夫の一人が岩を動かした。どうやら「岩戸」になっているらしい。


ギィ…………

開かれた重い「岩戸」の中に三王様と麗姫様は吸込まれていった。
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