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【鬼滅の刃】屋烏之愛【新装版】

第12章 進物 後編【冨岡義勇】





陽華が慌てて振り返ると、義勇は数メートル後ろに立ち止まったまま、物悲しげな表情を浮かべていた。陽華は小走りに義勇のもとに戻ると、その顔を覗きこんだ。

「義勇さん、どうかしました?」

陽華にそう声を掛けられて、義勇は切なげに優しく微笑んだ。

「……わかっている。お前は誰にでも分け隔てなく優しいから、今の言葉に他意はないと。……だが俺は、」

義勇はゆっくりと手を伸ばすと、陽華の頬に優しく触れた。

「お前からそんな言葉を聞けば、胸が期待して…ざわつく。」

「義勇さん…、それって…どういう…、」

「…言うつもりは…ないと思っていた。お前が俺を、恩人として敬い慕ってくれているのはわかっていたから、ずっと胸のうちに秘めていくと決めていた。」

義勇の憂いを帯びた瞳が、恋い焦がれるように熱を帯びる。

「だがもう、抑えることが出来そうにない。陽華……俺はお前を……、」

「ぎ、義勇……さん?」

「心より、好いている。」

その瞬間、陽華の胸がドクンと大きく高鳴った。

(うそっ…、義勇さんが私を?)

あまりの衝撃に、声にならず口をパクパクさせる。その姿を見て、義勇は慌てたように陽華から手を離した。

「す、すまない。困惑させるつもりはなかった。俺が勝手に心に抱いてるだけだ、もう忘れてくれ。」

そう言って、前を歩き出した義勇の背中に、陽華は慌てて声を掛ける。

「ま、待ってください!」

心臓がバクバクしてて、頭が混乱してて、顔が熱い。

「義勇さんっ!……私、こんなこと、誰彼構わずに言ったりしません、義勇さんだからです。私だってっ!」

陽華は勇気を振り絞るようにゆっくりと息を吐き出してから、もう一度義勇の背中をまっすぐに見つめた。

「…お慕いしてます。出会ったあの日から、今日までずっと。」






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