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【鬼滅の刃】屋烏之愛【新装版】

第12章 進物 後編【冨岡義勇】





悲しみに暮れる陽華とは別に、天元は密かにほくそ笑んでいた。

(…流石は悲鳴嶼の旦那だぜ。怒ったふりで陽華に狙いを定め、冨岡の怒りを煽って、止めを刺させるって寸法だな。)

鬼殺隊最強の男が描いた物語の結末に向かうための計画。それを考察して、天元は感嘆のため息を漏らす。



しかし、その眼の前では、今だに諦めきれない馬鹿……いや、超が付くほどのお人好しの陽華が、虚無僧の説得に努めていた。

「虚無僧さん、落ち着いて聞いてくださいっ!水の呼吸には、苦しまずに頸を斬って貰える型があるんです!義勇さんにして貰えば、苦しまずにあの世に行けるんです!!だから…、」

その姿に、義勇も顔に汗をにじませる。

(陽華、これ以上は……、)

身の危険を感じるほどの闘気に、説得は最早無駄だ。義勇は急いで陽華の腕を掴むと、無理矢理に後方へと引き摺って行った。

「陽華、もう話し合いは無理だっ!」

「でも、義勇さんも気付いてますよね?あの鬼、いつでも私達に止めを刺すことが出来るのにしないんです!」

「そ、それは…、」

思い当たる節なら、確かにある。義勇が答えに詰まり、考えるように視線を俯かせる。

その時だった。

陽華の後方から、虚無僧が放った一撃が陽華を狙うように飛んできた。

「陽華っ!!」

気づいた義勇が、咄嗟に陽華を突き飛ばし、自分は飛んできた鉄球の真正面に構えると、それを自身の刀で受け止める。

しかし、鉄球の勢いを打ち消すことは出来ずに、義勇はそのまま真後ろまでふっ飛ばされると、激しい勢いで壁に打ち付けられた。

「ぐはっ!」

義勇は苦痛に顔を歪ませると、打つかった壁をゆっくりとずり落ち、地面に到着すると、首を俯かせ気を失った。

「あ………、嘘…、ぎ…ゆう…さん……、」

義勇に突き飛ばされ、床に転がった陽華が唇を震わせながら、壁を背に座り込む義勇を見つめる。






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