第8章 休息
私が、不死川サンに助けてもらった過去を思い出したこと。
好きな人とおはぎを食べたい。すなわち、不死川サンのことが好き。
意識を失った不死川サンを目の前にして、頭の中を駆け巡ったこれらは、私の意に反して口から溢れていたようで…
「夢じゃなかったのかァ。ンで花耶チャン、なんの話だァ?」
目の前不死川サンは、私を見てニヤリと笑う。
(不死川サン、今日はやけに饒舌…。)
「え、えっとですよね…。」
不死川サンから逃げようにも、足を休めろと入れてくれた布団に2人とも横並びで座っている。少し身動ぎするとすぐにバレてしまい、不死川サンの右腕で右肩を掴まれてしまう。
(とにかく助けていただいたお礼を言おう。)
「不死川サン、私思い出したんです。昔、鬼に襲われた時、鬼殺隊の方が鬼の気を逸らすために自ら血を流して助けてくださいました。この前手当てをしながら、助けてくださったのは不死川サンじゃないかと思ったんです。もしそうだったら、ちゃんとお礼を言おうって。不死川サンは、私のことなど覚えてないかもしれませんが…。」
「忘れてなんかねェ。」
と言ってまた私の傷跡を指でなぞる不死川サン。
「こんな傷残しちまって悪かったなァ。」
「これは、不死川サンのせいじゃないです。本当に、命を助けていただいてありがとうございました。」
不死川サンは、
「アァ。」
と返事をしながらまだ頬を撫でる。
そして、ニヤニヤしながら私の顔を覗き込んで、
「もう一個の件はどうしたァ。」
「あ、あれは不死川サンとおはぎ食べたかったんですよ…!」
(恥ずかしいので“好き”という単語は、省く)
不死川サンは、フッと笑って、
「そうかァ。今度、飯でも食いに行かねぇかァ?」
「はい。もう!約束ですよ。また、任務で負傷でもしたらもう行きませんから!」
とさっきまで責められっぱなしだった私は、不死川サンに心ばかりの反撃をする。
「まぁ、この傷だァ。すぐには任務行かねェ。胡蝶にいつ帰れるか聞いとくからよォ。」
私は、
「わかりました。早く治してくださいね!」
と言いながらふふっと不死川サンに微笑みかけたのだった。