第6章 記憶の中の人
私は、先輩たちを呼びに走りながら、昔のことを思い出そうとしていた。
数年前、私たち家族は鬼に襲われ、私は両親を失った。
さっき不死川サンが、撫でてくれたのはその時の傷。
両親を喰らった鬼が、とうとう私の方に手を伸ばし私の頬を引っ掻いて、私は、出血と恐怖のあまりそこで気を失ったのかその後のことは覚えていない。
覚えているのは、戦闘後に隠しの方が丁寧に手当てをしてくれたこと。残念ながら、一本だけ薄っすらと傷跡が、残ってしまったけれど、そのほかの引っ掻き傷は、綺麗に治った。
そして、私はあの時の隠しと同じように鬼に襲われてしまった人や鬼殺隊員の手当てがしたくて鬼殺隊に入ったのだ。
ただ、鬼が目前まで迫ってきていたのにどうやって助かったのか…。それを思い出さなければいけない気がする。
答えが出る前に、先輩たちのいる宿までたどり着いてしまったが、もうそんなことを考えている余裕はない。
手早く先輩たちに状況を報告し、自分も身支度を整える。
先輩は、仮眠していた体を起こしながら、
「不死川様、いくらなんでも戦闘開始早すぎでしょ。」
と寝起きの悪態をついていた。
私は隣で身支度を進める、
髪から簪を抜き取り、描かれている風車を見るとさっきの不死川サンの微笑みと戦闘に向かう後ろ姿が、一瞬脳裏に浮かんだ。
「今行きますから、不死川サン!」