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【カミヨミ】らじおみきさー

第2章 親友の御用達


菊理と帝月が珍しく、お気に入りの職人を見付けたとのことで、俺も一目みようと近円寺公の邸宅を訪れた。

特別待遇なのか、近円寺公の使用人達も彼を怪しむことなく邸宅に招き入れたようで、俺は帝月が職人と二人きりになるという縁側に向かう。

「はじめまして」

職人は外出している帝月を庭先で片膝をついて待っていたようで、俺が声をかけるなり、突然命よりも大事な子供を抱き締めるように自ら作った商品を抱えながら、俺を不思議そうに見つめていた。

「驚かせて申し訳ない。帝月の友人日明天馬という。・・・帝月を待っているのか?」

軍服の出で立ちで驚かせてしまったのか、俺は俺と同い年であろう職人に謝り、彼に訪ねた。帝月の言葉に警戒心を解いたのか、若き職人は商品を抱き締めていた腕の力を緩めて俺に頷く。あまり語らない職人気質というのは、彼を表すのだろうと俺は微笑む。


「俺と変わらない年でありながら、素晴らしい簪を作っていると許嫁の菊理からも聞いている」

一度、上機嫌な菊理に見せて貰ったことがある。蝶を模した模様の櫛は、今にも生き生きと飛びさってしまいそうな美しさを秘めており、菊理が「兄様ったら、私に内緒で鉄矢に自分だけ売るようになんておっしゃったのよ?」と拗ねていたのを、俺は思い出す。

俺の言葉にブンブンと横に頭を降るのを、彼の腕前と性格もあって物事に人一倍五月蝿い帝月に気に入られているのだと俺は鉄矢に好感を持った。
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