第2章 伊織家
「…え……?」
何が起きているか、分からなかった。
家に帰った途端に知らない男の人たちから取り押さえられ、奥の部屋から母が出てきた。
そして今までに聞いたことのないような優しく、甘い、猫なで声で私にこう言った。
「愛実。ごめんね。お母さんね、
愛実売っちゃった。」
突然冷たかった母が久しぶりに話したと思えば、それはとんでもない衝撃の内容だった。
お母さんね、好きな人ができたの。
その人は私に子供がいたら嫌なんだって。
だからお母さん1か月ぐらい前から愛実の貰い手探してたんだけどね。なかなか見つからなかったの。
小さな子が好きな人たちばっかりだったから、愛実ぐらいの年を貰ってくれる人、少なかったのよ~。
でもこの前愛実が欲しいって言ってくれた人たちがいてね~
結構な額で買ってもらったの。
だから、もうお母さんと愛実は一緒に暮らせない。
ごめんね?
意味が分からなかった。
どうせ朝帰りでいつも帰ってこない人が、
私を見もしないような人が、
……私を…………売ったの?