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君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】

第4章 4




衣装合わせも終わり、時刻はそろそろ夕飯の時間となっていた。

「さんは今日はもうこれで終わり?」
「はい、なんせこれがデビュー作になるものなので…仕事今これだけなんです」

他にも小さな仕事は来ていたらしいが、ドラマに集中させたい万理がお得意の処世術で依頼を延期してくれたり円満に断ったりしてくれていたらしい。
改めて万理に感謝すると共に、絶対にこのドラマで何かしら評価を得ないといけない、というプレッシャーも感じた。

「俺も今日は終わり。迎え、来る?」
「今日はこなさそうです。連絡も来ていないので」

紡は誰かしらを迎えに行かせると言っていたが、まだ小さな事務所。
スタッフもそこまで多くないが故に、手が空いている人はいなかったのだろう。
スマホを確認するに頷けば、龍之介は首を軽く傾げながらを見る。

「良ければ、送っていこうか?」
「え…いえ、十さんお疲れでしょうし、大丈夫ですよ」
「そう?でも少し遅くなっちゃったし、心配だよ」

これは彼の親切心。
現にこの心配顔が下心ありきの物だったら、アカデミー賞総なめものである。
変な期待をするな!と心の中で自らを叱咤し、改めて送りを断る。

「ありがとう十さん。私これでも色々合わせて三段ほどの有段者なのでご心配なくです」
「え?!そうなの?!」
「…すみません、嘘です。あ、でも合気道と居合は習ってましたので、多少の心得はあります」

居合は帰り道ではあまり役に立たなさそうではあるが、だから大丈夫と微笑む。
それでも心配そうな龍之介に絆されそうになったところで、後ろから声をかけられた。

「!」
「え…万理さん?!どうしたんですか?」
「あれ?ラビチャ送ったんだけど…。迎えいくよーって」
「えー?あ、今!今来ました!」
「今?たまにあるよね、こういうこと…」

振り返ったの驚きの顔に、龍之介が万理に視線を向ける。
続いての会話に事務所の人間だと認識をすると、安心したように微笑んだ。

「お迎え来てよかったね」
「はい!ご心配おかけしてすみません」
「ううん、心配するのは男として当然のことだよ。あ、八乙女事務所の十龍之介です」

万理に頭を下げ、龍之介が挨拶をする。


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