第63章 受け継がれる命
杏(……止まった。)
杏寿郎は血が出て来なくなったことを確認するとすぐに菫の顔を覗き込む。
杏「菫。」
菫はとても眠そうで今にも意識を飛ばしてしまいそうだった。
杏寿郎は先程も声に反応しなかった事を思い出すと血濡れた手で菫の頬に触れた。
杏「もう大丈夫だ。貧血に良い物を沢山食べればすぐに良くなる。…菫。」
触れられている事も分からないのか、分かってはいるが眠気に耐えられないのか。
どっちなのかは分からなかったが、今眠らせれば永遠に起きない気がした。
杏「菫、」
杏寿郎は酷い焦燥感から内臓がひねり潰されそうになった。
槇寿郎と千寿郎に何かを問われた気がしたが、返事をする事が出来なかった。
杏「菫、寝るな!頼む…、」
そう言って頬を撫で、懸命に目を合わせようとする。
しかし、その努力虚しく菫はとうとう瞼を閉じてしまったのだった。