第62章 ※遠い初めての夜

それでも愛しい杏寿郎に触れられれば菫の体は再び高められていってしまう。


菫はそんな "厭らしい" 体を止めたくて布団を握り締めて耐えようとした。

しかし、そんな抵抗虚しく菫の体は三度目の絶頂を迎えそうになる。


(……っ)


耐え難かった菫は思わず杏寿郎の腕を両手で掴んだ。



「も…もう、お止め下さいませ…。」



普通の声を出そうと努めたつもりだったが、出した声は震え、怯えたような色になってしまった。

そんな声色を出された杏寿郎も目を見開き、眉尻を垂らして手を止めた。


杏「すまない。痛かったか。」


菫は優しくそう問われると涙を溢してしまいそうになり、表情を隠す様に顔を背けた。


「……いえ。」


その消え入りそうな声を聞いた杏寿郎の昂りはすっかり萎えてしまった。

怯えられた事がショックだったのだ。


杏寿郎はすぐに菫の手を引いて上体を起こさせると優しく抱き寄せた。