第58章 休養―其の弐

天「取り敢えず俺から胡蝶に言っておくから今はそっちのベッドに寝かせとけ。」

杏「待て、君はもう動かずに…、」


杏寿郎が心配そうにそう言うも、天元は巨体に似合わない素早さで天井に上がってしまう。


天「あいつ等三人も居たし、二人切りなんて久し振りなんだろ。今のうちに心の整理つけとけ。」


杏寿郎はその言葉に目を丸くした後眉尻を下げて微笑んだ。


杏「…ありがとう。」

天「おう。」


そうして天元は杏寿郎の病室に行っていた事をしこたま怒られながらも話を通したのだった。




杏(起こしてしまうだろうか。)


杏寿郎は痛む体でベッドから下りると、握られた手を繋いだまま菫を抱き上げた。


杏(…眠りが深いな。ここまで無防備なのは珍しい。)


菫が無限城に引き込まれて一晩逃げ回っていたとは知らない杏寿郎は、そう思うと頬を緩ませて隣のベッドに菫を寝かせた。