第3章 奇跡の夜、口付けの朝
目を開くと、となりにはまだ静かな寝息を立てて眠るカカシがいた。
昨日は先に眠ってしまったカカシの横顔を見ながら、わたしも穏やかな気持ちで眠りについた。
カカシは私のこの傷を見ても引いたりしなかった。
ただ、私と今ここで一緒にお酒を飲めることが奇跡で、嬉しいと言ってくれた。
嬉しかったな……
昨日のことが、カカシの抱きしめてくれた温もりごと蘇る。
思ったよりもがっしりした身体。
しなやかで細身に見えるカカシだが、やっぱりずっと忍として戦って来た人だからか、抱きしめた体はすごく逞しかった。
またあの安心する腕の中に抱きしめてほしい。
……って、何考えてんだろ!!
ダメだダメだ!!
カカシは寝るためにここに来てるだけなんだから!
優しくされたからって期待なんてしちゃダメだ。
カカシは里の長で、優しいし、きっとすごくモテるだろう。
遊女の私なんか好きになる訳が無い。
「なに百面相してんの?」
完全に自分の世界に行っていたわたしは、カカシの声に一気に引き戻される。
「っわ!いつから起きてたん!?」
「んー、ちょっと前?」
「起きたんやったら声かけてや」
「や、なんか夕月が面白かったから」
片手で頭を支えながら、カカシが面白そうにこちらを見ている。
抱きしめられたときのことを思い出していたなんて、恥ずかしすぎて口が裂けても言えない。
「面白がらんといて!!」
自分の枕をカカシ目がけて投げるが、そこはさすが忍。
やすやすと枕を投げ返されてしまい、枕は私の顔に命中する。
「む!!」
負けじと枕をもう一度投げ返す。
今度はカカシの分も取って2個投げる。
「ちょっと!
やめなさいって」
静止しながらも、カカシも笑いながらやり返してくる。
「カカシもやってるやろ!?」
だんだん本気になって、起き上がったわたしはポイポイと枕をなげる。
だんだん息があがってきたわたしに対して、カカシはまだまだ余裕だ。
それが悔しくて、さっきよりも思いっきり枕を投げる。
カカシはその枕をすいっと避けると、グイッと近づいてきて、わたしの両手首を簡単に捕まえてしまった。
「はい。オレの勝ち」
わっ!近い!!
私の膝をまたぐような体制になったカカシの顔は、わたしの顔と10センチくらいしか離れていない。