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今宵は誰の腕の中で眠りますか⋯?

第1章 好きです先生 (松野千冬)


『千冬くん…?入らないの?』

見惚れてぼーっとしていた俺を不思議そうに見つめている。

「あ…ごめん入る。
お邪魔しまーす…っ」

『適当に荷物置いて座っちゃっていいからね』

一人暮らしにしてはすこし広めな部屋。
女の人の部屋って初めてで緊張するな…

『千冬くん何飲む?
お茶かコーラかオレンジジュース
温かいやつだとココアとミルクティー
なにがいい?』

「あー、お茶がいいっす」

『なんで敬語…?ふふ
そんなかしこまんなくていいよ?』

いやいや、好きな女の家来て緊張しない男いる?
もう勉強どころじゃねえんだけど…。

「なんか久々で緊張しちゃって…」

『ほんと久しぶりだねえ
千冬くん元気だった?』

「うん、ちゃんは?
てか彼氏いないってホント?
生徒の前だから隠してるの?」

『私もまあ元気にやってたよ
彼氏いないのはホント…。』

「いやでも…なんで?
…あんな仲良かったのに」

『なんで…?なんで…かな。
振られちゃったからさ…わたし。』

今にも泣きそうに声を震わせながら話すちゃんに、まだあの人のことが好きなんだなって胸が痛くなる。

「ちゃん…っ
まだあの人のこと…好きなの?」

『うん…忘れたいんだけどね…。
他に好きな子が出来たんだってさ…。
そんなこと言われたら仕方ないよね…。
もう私に気持ちがない人引き止めらんないよ。』

辛そうに笑う彼女を抱きしめてあげられるのが自分では無いことが悔しい。

「俺も失恋したんだ…一緒だね。」

たった今…別れを告げられてもなお忘れられない人がいるちゃんに俺は失恋した。今っていうか…ずっと失恋中だったけど。勝てっこねえよ。初めからわかってた。俺より強くて、下からも慕われてたあの人に…俺なんかじゃ勝てねえって…。だけどそんなんで諦められなかった。

『そ…っか。
よしよし千冬くん。辛いね…っ』

そう言って抱きしめてくれたちゃんが少し震えてた。失恋したのは嘘じゃない…相手がちゃんだなんて本人は微塵も気づいてなくて。だけど少しでもそばにいられるならなんでもいいんだ…。
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