第3章 呪いの藁人形
聞こえる、風もないのに草木の擦れ合う音。
だが足音はない。獣でもなさそうだ、何がくる?
林の奥に目を凝らす。と、何かが見えた。藁が人の形をしていて、ゆらゆらと歩いてくる。多勢で軍団の如く、壁が迫ってくるかのようだった。
「よもや!随分連れてきたな!」
「だから言ったんです!しかも藁で出来ていて、切っても切っても倒れないですし、切れた端からもあのような形になってしまうのです!」
なるほど。月城は鬼を追う合間に戦ったがこの結果になったと。それでこの数か。随分と切ったのだな。
だがこの藁人形、微かに鬼の気配がする。決して妖かしなどではない。切れる筈だ。
「全て焼き尽くす!」
炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり
渦巻く炎の斬撃を藁人形に浴びせる。藁は燃え尽き、崩れた。俺の炎の呼吸が相性が良さそうだ。
直線上にいる藁人形には不知火で一気に焼き尽くす。
直ぐに片付いたが、肝心の鬼がいない。
「炎柱!流石です!やりました!」
隊士が言った。いや。これで終わりではない。
「今のは鬼の血鬼術だろう。本体がいるはずだ。人形を操るなら、あらゆる操術が可能かもしれん。気合をいれろ!」
「はい!」
威勢よく返事する隊士の横で月城は不安気だった。
倒せない敵に一人で恐怖したのだろう。払拭してやりたいと思い、大丈夫だと意を込めて微笑んでみせた。
ハッとした表情になっていたが、すぐ微笑み返してきた。
「いくぞ!」
「はい!」
「はい。」
俺たちは林を奥へ進む。鬼の気配はまだ微かだ。日々培った勘だけが頼りだ。
後ろを歩く隊士が小走りにやってきて俺に並んだ。
「炎柱!」
「何だ!」
「あの異人の隊士は何者ですか?着いてきますがよいのでしょうか。」
「うむ!彼女は俺の継子だ!まだ階級は癸だが、きっと良い剣士になるとみた!それに、彼女の任務は先程の鬼を切った時点で終わっている。こちらを手伝ってくれるなら有り難い!」
「そうでしたか。炎柱が、そのように仰せなら…」
隊士はやや不服そうだが納得した。
継子は誰でもなれるわけではない。きっと羨ましいのだ、それは無理もない。癸から継子に選ばれる隊士はそういない。
隊士はまた後ろへ下がっていった。月城に話しかけているのだろう、二人の話し声が聞こえた。