第19章 黎明のその先へ【END2】
私も同じように見上げた。
桜は風に花びらを散らし、まるで慰めるように頬を撫でて落ちていく。
枝の隙間から見える月がまた儚げで美しい。
「ところで、君はなんでこんなところにいるのかな?」
「えっと…」
そう問われると、自分でもよくわからないので黙り込むしかない。
なんとなくここに行き着いたけど、行くところもないし、鴉も梟もこないし、家に帰ろうかな。
「時々ね、この木の元に君のような人がやってくるよ。」
「私のような…?…外国人ですか?」
和尚様は首を横に振る。
「迷い人とでも言うのかなぁ。決まって今日のような満月の日でね。きっと関係があるんだろうね。」
和尚様の言うことがまだよく分からなくて首を傾げる。
迷い人とは…?
「多分ね、君はこの世の者ではない。」
「えぇっ!?」
急に幽霊扱いをされたと思い声を上げてしまった。和尚様の表情は変わらないし、冗談という訳でもなさそうたけど。
ただ自分でも怪しくなってきて自分の姿を見た。
やっぱり死んでいるのかも…。
…足は……ある。
「現し世とは、幾重にも重なっていて、みなそれぞれ少しずつ違うという。君はきっと、別の現し世の者ではないかい?」
俗に言う神隠しも、なんらかの理由で別の世へ移動してしまうものと言われているとか。
「…………っ!だから少しだけ違うような気がしたのかしら!」
「そんな気がしたなら、やっぱりそうかもしれないね。それに、実際に君はこちらの世にも来ていなようだよ。」
「え?」
ますます分からなくて気の抜けたような聞き返しをしてしまう。
和尚様が言うには、煉獄家で私とすれ違ったので、女性が来ていたと話したそうだが、誰も私のことを見ていないと言ったそう。
「それで千寿郎さんは返事をすることも、目を合わせることもなかったのね…。」
そういえばすれ違った誰かとぶつかったと思ったのになんともならなかった。
「和尚様。失礼ながらお手をよろしいでしょうか。」
差し出された和尚様の手に、触れることはできなかった。
通り抜けてしまった。
驚く私とは逆に和尚様は変わらず微笑んでいる。
私はどこにいるのだろう…?