第1章 Hallowe'en
<グレイの場合>
「もう、じれったいわね~。早く渡しちゃいなさいよ、ノエル。」
隣で腕を組んで可愛い顔で私に文句を垂れているのは友人のルーシィ。あなたみたいに完璧なルックスなら、私だってとっくにアタックしてるってのに…。
「アタックしろなんて言ってないわ。ハロウィーンのお菓子を渡すだけじゃない!」
「恥ずかしいものは恥ずかしいの!だってグレイは…!」
「俺が何だって?」
「うわぁー!っ何でも!」
「酷くねぇか、その反応。」
「影が薄くて気付かなかったんじゃないのー?」
「何時の話してんだよ!」
ルーシィはグレイが好きじゃないからそんなに自然に話せるんだ。私だって好きだと自覚する前に戻りたい。あ、でもグレイを好きなのは止めたくないなぁ。
「ってかお前、ホント最近おかしくね?」
「え?何が?普通だよ。」
「嘘つけ、顔が引き攣ってんだよ。」
「あぁー!!」
「うおぁ!びっっっくりしたぁ!何だよいきなり!」
「これあげる!じゃっ!」
半ば投げつけるようにデコレーションしたカップケーキの袋を渡して、脱兎のごとくテーブルから逃げ出す私。後ろでルーシィの大爆笑が聞こえるけど、そんなこと構ってられない。
―ここまで来ればもう大丈夫でしょ…。ていうかもう走れない。
「オイ。なんで逃げんだよ。」
「…。なんで…。」
息一つ乱れてないって、どんな足の速さと体力なの。私全力で走ったんだけど、酸欠なんだけど。
「ルーシィから聞いた。お前、」
「そうだよ!グレイが好きでどうやって接していいか分からなくて!しかもジュビアまでいるからさぁ!」
「…アハハハ!」
「なによ…。」
「Trick or Treat」
「へ?」
「掛ったな。俺を見て逃げ出す、目も合わせられねぇ、オマケに顔が真っ赤ときたもんだ。感づかねぇ訳ねェだろ。」
はめられた…。グレイは私の気持ちに気付いてたんだ。なのに私一人で悩んで焦って、馬鹿みたい。
そう思ったら、何だか鼻の奥がつん、とした。
「…ぐす、お菓子、あげたのに。」
「おう、ありがとな。」
「悪戯したぁー。」
「ノエルが可愛くて、つい。」
「嫌い~。って、ええ!?」
「俺のことでコロコロ顔色変えてんの見てんのが、面白くて、気付いたら目で追っかけるようになってた。」
ああ、彼のこの顔が好きだ。
