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満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】

第34章 くらし、始まる※《宇髄天元》



ちょいちょい、と手招きをされて、宇髄の方へと寄ると、ここへ座れと指をさされた。
波奈は縁側で、宇髄の隣へ腰を下ろした。
ずいぶん夜もひんやりとしてきた。
満月に近いお月様がやんわりと辺りを照らす。

「…疲れたか」

「いえ、…あ、えっと、少し」

着流しを着た宇髄は、どっしりと座っていて、色気が漂って波奈は怖気付いた。
そんなドギマギしてる波奈に、宇髄は余裕そうに笑った。

「……胡蝶がな、」

その名を呼ばれてどきりとした。

「お前に良いところの縁談はないかと相談してきたんだ」

「ええっ?しのぶさんが?」

わたしに縁談を?
いったいなぜ。
驚いている波奈を宇髄はうっそりと笑った。

「そりゃあお前、嫁いでやや子を産んで、幸せになってほしいからに決まってんじゃねーか。胡蝶はそう思ってたみたいだぞ」

「そんな…でも、…わたしは、…」

幸せになる権利なんて、私の中にはあるのだろうか。
こうやって、愛おしくて仕方がない宇髄さんの隣にいることが、後ろめたくて仕方がない。

「…波奈?」

黙って下を向く波奈を心配そうに見つめる宇髄は、大きな手を波奈の手を包む。
波奈はびくりと手を拒んだ。

「…っ、う、…っ…さん…」

「…うん?」

「し、のぶ…さん…っ」


しのぶさん、しのぶさん。


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